第4章 現代女性の悩み ① 愛とは忍耐と苦痛 064P
うものは、いっそう燃え上がるというもので、その一方で、二人の関係を誰にも気付かれないように細心の注意を注いだ。
もし、出入り業者との間の不倫関係が知られれば、社内でも問題にされ、K男も出入り禁止を食うかも知れないからである。
しかしながら、暫くしてK男が東京の本社に転勤することになったのである。
とはいえ、いずれそうなる運命であって、お互いに別れを切り出すまでもない。
別離のタイムリミットが、刻一刻と近づいてくるが、ここに至れば蝋燭(ろうそく)の炎が燃え尽きる瞬間と同じで、その炎にはじめに抱いていた警戒心も薄らいでしまうというものだ。だが、そんな妻の変化を夫のほうも見逃すはずがなかった。密かに探偵に尾行させていたのである。
この夫婦破綻の決着は、調停にまで至らず、お互いの合意による協議離婚で終結した。A子さんは子供を連れて、生まれ育った都会に帰ってしまったが、こうした状態になって、初めて夫が、「夫婦愛というものは、近くにあって、遠いものだ」としみじみ感じているのである。
続く・・・
«前へ「第4章 現代女性の悩み ① 愛とは忍耐と苦痛 063P」 | 「第4章 現代女性の悩み ② 結ばれない愛の運命もある 065P」次へ»