第3章 移り行く女性像 ⑦ 新しい時代 055P
流行した。
昭和31年、輪島から能登半島の先端に向かう途中にある曾々木海岸で、「忘却とは忘れさることなり……」のナレーションで始まる、「君の名は」と同じ菊田一夫原作の映画「忘却の花びら」のロケが行われた。
都会の男性と能登の姉妹の、美しくもはかない恋ドラマである。
この東宝映画は、正月封切りとなって、全国の映画館で一斉に上映された。
人気俳優の池部良、司葉子が主演で、脇役に白川由美、志村喬、小泉博などが固める、超豪華キャスト、それに、当時として珍しかった総天然色(カラー)で、能登の景観とともに映し出されたのである。
当時は、映画が大衆娯楽の花形であり、旧国鉄駅のある町には、映画館の一つや二つは必ずあったもので、こうして全国に紹介された能登半島は、「詩の国、夢の国」として、能登観光の夜明けを迎えることになる。
しかし、若者の血を騒がす”憧(あこが)れはやはり「花の都東京」であった。
この頃から、「金の卵」ともてはやされて、中卒労働者の
続く・・・
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