第3章 移り行く女性像 ⑤ 戦中期 046P
れが原因で離婚している。
その時、世間体を気にしながら冷たく当たる夫に、「いまにみておれっ、死を五分ずつのばしてみせる」と決心し、自ら家を飛び出したのである。
もともと、幼少のころから海外という大空に夢みていた。その鳥は飛翔(ひしょう)して北陸の片田舎の巣から飛び出すと、もう止まらない。
上京し、新聞社に勤めて間もなく、大陸の満州で戦争がはじまった。
決死隊を募ると言われて腰が引く男性記者を尻目に、永田は血判を押して海外派遣を志願する。
五尺(約150センチ)足らずの女が、初めて大陸の地を踏んで、陸軍省から指示されたところが、なんと馬賊のはびこる危険地帯であり、そこでの諜報工作活動、いわゆる「スパイ」活動であり、さしずめ、現代版「女性007」という役どころ。
「今さら引き返すこともできない、もうどうにでもなれ」と度胸を決め、中国服を着て、カバンの中には、常にピストル一丁、短剣、数珠に経本と、
続く・・・