第7章 女の目から見た男たち ② 男の後ろ姿 155P
寅さんの人一倍相手を思いやる人間性が、どこかバランスを欠いてドジってしまう。それが寅さんという人物に与えた個性であり、その個性が魅力に発展していくのである。
「私こと、ごやっかいかけがちになる若造です」その言動に、思わず笑いこけるが、そういう観客も心の底には、自分が経験したほろ苦い思い出や、恥ずかしい記憶がふとよみがえって、その胸中を察し、不思議に心が和らいでしまうというものである。
このような男の魅力というのは、寅さんが大きな鞄をブラ下げて、行く当てもなく旅する後ろ姿にこそ窺(うかが)われ、例えばサラリーマンが仕事を終えて、なんとなく人生にも仕事にも疲れた格好で歩いている、そんな後ろ姿と共通するような、そこに魅力の根源があるではないかと思わせてくれるのである。
今の男性は、総じて自信を失いながら、さまよっているといった感じがするようだ。
世のため、人のため、ひいては国家に役に立つために、目標をもって生きているという信念のあるものが、周りからすっかり消えうせてしまった。
そのくせ、欠点や劣等感を隠して、男としてのほ
続く・・・
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