第5章 されど女は強い ⑥ 暴力に耐えて 113P
一層のめり込んでいった。
妻のT子さんは、こんな夫の姿に同情と哀れみを感じていたが、しかし、現実の生活は、ますます経済的困窮に重しをかけ、「住宅ローンや子供の学費の捻出(ねんしゅつ)はどうしたらいいのか?」と悶々考えながら、パート勤務に出たのである。
いろいろなことがあっても、一家が健康で過ごせれば、それが何よりだと自分に言い聞かせながら……。
T子さんは、貧乏暮らしの中で、粗末な衣服を着ていても、生来の美しさは勤務先でも評判であった。
W男は、そんなT子さんが他の男性と親しく口をきいたりするのを見れば、家に帰って当たり散らした。
これに対して、T子さんも金銭的にだらしない夫に対し不満をぶつけて、夫婦喧嘩(げんか)は絶えなかったというが、それでも決して双方とも相手が嫌いでなかったのである。
こうして、夫婦は危ないバランスを保ちながら歩いていたが、そのバランスが決定的に狂い始めた事件が発生した。
T子さんが、長女の高校進学を控え、苦
続く・・・
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