第5章 されど女は強い ④ セクシュアル・ハラスメント 104P
どこでそれを主張するのですか。裁判は公開ですからね。それでなくても相手がマスコミにでも駆け込んで、騒ぎたてたらどうするんですか。それに専務は役員ですから、会社の責任そのものですよ」
と現実論で切り返してくる。
無駄な時間だけが、意味なく経過していく。
しょせん知識と体験のない者同士であるから、いくら議論を重ね合っても埒(らち)があかないというもので、やがて「まともに相手と法律で張り合っては分が悪い」ことを悟りながら、二人とも頭を抱えるようにして、
「こんな問題は、大企業だけのものと思っていたから、全く予防も警戒もしていなかった。しかし、こんなことで専務を切るわけにはいかないしな」
「当世は、法律よりも外部の声のほうが、ずっと怖いのです。あること無いことがおもしろおかしく伝わって、それが信用を失墜させ、会社の屋台骨さえも揺るがしかれないこともありますからね」
「おいおい、脅かすなよ。俺がこの会社をここまでにするため、どれだけ苦労したか、君にだって、それぐら
続く・・・
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