第1章 北陸の女性 ② 歴史が育んだ女性像 010P
を持つ者の側につかえる女性らと仲良く相通じながら、機敏に男の時代を読みとっていた……。
才知に長けた「まつ」なら事前に情報を人手する、それを裏付けるまつの手紙が現在でも数多く残っているという。
筆まめなまつが、こまめに文を出す。女の口が軽いというのは世の常だから、
「ねっー、まつさん、私の悩み聞いてよ。うちの人ったら、また江戸の狸おやじと密約して、若い妾をいただいたのよ、まったく頭にきちゃうわ。それに、今年の秋にはまた大坂に出陣だって……、あそこはお酒がうまいし、女は最高だなんて、今からせっせと槍?を磨いて喜んでいるの。男なんて、つくづく馬鹿だと思うわ」
その返書に目を通しながら、まつは思わず「してやったり」とほくそ笑む。
いわばまつは優れた諜報家であったのだ。
その下地があったからこそ、夫や家臣、子供たちを叱りつけ、巧みに家や家族を守り抜いた、そこに「まつ」の賢明さがあったのに違いない、そう思ってみるのである。
ところで、
続く・・・
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