第5章 されど女は強い ⑥ 暴力に耐えて 114P
しい家計のなかで、必死に蓄えていた預金をW男が持ち出して、全部使ってしまったのである。
それに、追い討ちをかけるようにして、サラ金業者からこれまで見たことのない督促が舞い込んで来た。
T子さんは、それを眺めながら暗澹(あんたん)とし、これから先のことをことを考えると気が遠くなる思いであった。
とうとう、それが原因で大喧嘩になり、隣近所に響きわたる怒声や、泣き声に、見かねて誰かが警察に連絡してくれ、かけつけた警察官にたしなめられて、その場はなんとか収まった。が、W男には後ろめたい気持ちがあったのか、その夜に家を出て行ったまま暫く帰宅しなかった。
T子さんは、そんな夫に最後まで希望を捨てず、残された子供三人を飢えさせることなく帰りを待った。
二ヶ月ほどして、ぶらりと帰ってきた夫に、T子さんはこれまでのうっ憤を一気に爆発させ、激しい口論となった。
「非」はどこからみても夫にあったが、素直に謝るどころか、「わしの金をわしが使って何が悪い…
続く・・・
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