第5章 されど女は強い ⑤ 結婚に定年はない 106P
能登の門前町、輪島市、内浦町には、「アマメハギ」と呼ばれる重要文化財の民俗行事がある。
鬼や天狗面をつけ、簡素な狩衣(かりぎぬ)を着込んだ姿で、町内を戸別に訪れ、子供たちに、「怠けものはおらんか」と親のいいつけをきかぬ子らを脅したというが、しかし、今はその子供らが保育制度の充実から不在である。とはいっても、舅(しゅうと)が孫の代わりに若夫婦相手に、正月早々からそんなことをやれば、それこそお家騒動になりかねない。こうして、郷土色豊かな伝統文化が今また消えうせるのか、新しい時代は年寄りから何もかも奪っていく。
かつては、冠婚葬祭などの行事は、年寄り連中の知恵を借りなければ、過去のしきたりや習慣が分からなかったし、どこの在所でも知恵袋というものが必ずいて、その場を仕切ったものだ。
ところが、今では行事ごとに隅の席に追いやられて、
♪お前百まで、わしゃ九十九まで
ともに白髪の、生えるまで……
なんて一曲やろうものなら、「まだ、そんなに長生きしたいの」と周りがジロッ
続く・・・
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