書籍紹介

第5章 されど女は強い ④ セクシュアル・ハラスメント 103P

このB子さんの発言が、退職問題を一挙にこじらせてしまった。

当の専務であるが、「根も葉もないこと、出るところに出てもかまわない」とお定まりの弁明をしたものの、それは上に立つ男の常套手段で、虚勢というものである。

なぜなら女の勘というものは、その面では実に鋭敏で、専務のB子さんに対する不埒(ふらち)な行為は、平素から他の女性らは百も承知で見ており、知らぬはまじめな総務部長と、商談や交際に駆けずり回って、社員管理まで目の届かなかった社長ばかりなり、だったのだ。

慌てた社長と総務部長が、過去の労働裁判とやらを勉強し始めたが、いかんせん馴染みの薄い、しかも難解な法律とか判例には、字を追うだけでも頭痛が増すばかりで、しかも当てはまるような事例が極めて少ない。

社長が間に合わせの法律論を持ち出して、

「これは社内恋愛ではないのか、労務問題と異質だよ。会社の管理責任まで波及することがないと思うね」

と言えば、一方の総務部長は、

「弁護士みたいことを言わないで下さいよ、

続く・・・

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