第5章 されど女は強い ③ くノ一忍法帖 093P
金沢の寺町台に炒立寺、別名「忍者寺」があるが、これは三代藩主前田利常が、日蓮聖人の霊を祭り、藩の祈願所とした寺である。
当時、徳川幕府は加賀藩の謀反を強く疑って、何かと圧力をかけてきたため、利常は徳川家から奥方をめとったうえに、故意に鼻毛を伸ばし、狂気に満ちた振る舞いをするなど、あくまで無能さを装って、幕府からの嫌疑を逃れようとした。
ところが、一見バカ殿の利常は、戦略上から寺町という寺院密集地を建設し、その指令センターとして、金沢城近くにあった炒立寺を移築してきた。
そして、幕府の隠密(おんみつ)や敵の目を欺くため、他に類をみない仕掛けをこの寺にほどこした。
幕府の指令に従って二階建てに見せながら、実は七層四階建て、正面からは埋め込み式の賽銭箱の落とし穴があり、それなら裏から攻めようとしても、階段の蹴込み格子から槍が足元に突き刺さる。
内部も、迷路で至るところに抜け道が隠され、茶室も長刀(なぎなた)や槍を振り回せないように、天井
続く・・・
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