書籍紹介

第5章 されど女は強い ① 絶望から立ち上がる 084P

全身から血が引いていくのを感じた。

その女は一方的に言い放った後、ドアを叩き付けるようにして立ち去ったのである。

その夜遅く、Y子さんは暗澹(あんたん)たる気持ちで、男を呼び寄せて問い糾(ただ)した。

ところが、男は案外すんなりとこの女との交際を認め、また、アパートを借りてやっていたことまで告白した。

「俺が悪かった。子供は堕ろさせる。好きなのはお前だけだ、信じてくれ」と、その場で土下座して、ぶざまな謝り方をしながら……

しかし、その後もあの女からの攻撃は、執拗(しつよう)なストカー電話となって、時には職場へも続く。

やがて、二人の間に決定的な破局が訪れた。

男は身勝手にも、「生まれる子供を認知したい」と、臆面(おくめん)もなく言い出したのだ。

それと相前後して、密かに依頼してあった探偵から、男があの女とたびたび密会を繰り返していたことが、証拠写真とともに報告された。

どうして、あんな軽薄な男を愛してしまうたのだろうか、自分が情けない。

もう引っ込みのつかない挙式の日取りが、刻一刻と迫ってくる。

「なぜ、私だけがこれほどまでに虐待を受

続く・・・

  |  

Return to Top ▲Return to Top ▲