第3章 移り行く女性像 ② 民謡の世界 036P
哀愁を帯びた胡弓(こきゅう)の音が聞こえてくる。その調べにのって、揃いの浴衣に鳥追い笠を被った踊り手たちが、ゆっくりと坂を上ってくる。
♪唄われョ、わしゃ囃す
この合いの手が人ると、歌い手が節まわしよく高らかに唄うのが、おわら盆のスタイルになっている。
♪越中で立山、加賀では白山
駿河の富士山、三国一だよ
おわら節の歌詞にしても、三百年の間に培われた民謡と踊りであり、古謡から新作に至るまで、全部で一万種を超えるという。
「風の盆」と言われる由来は、台風がやってくる二百十日の厄日に、風よおさまれ、という願いをこめて、
♪二百十日に、風さえふかにゃ
早稲(わせ)の米くて、オハラ踊ります……
と三日三晩、町中がこぞって、町筋をねり歩き踊り明かすというのである。
昔から、男と女の世界には厳しい社会の掟(おきて)があった。
ここでは、若い男と女が公に許される、年に一度の出会いの場であったという。そこに振り付けされる、男踊りは、一般に案山子(かかし)踊りと呼ばれ、素朴な農作業の所作を基本にし
続く・・・
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