第3章 移り行く女性像 ② 民謡の世界 035P
民話は、口から口へと伝わりながら、それはまた虚飾の世界に埋没させ、蜃気楼(しんきろう)のように消えうせてしまう。
だが、民謡は雪が消えても土に残るように、庶民の仕事歌、祭りや祝い歌として息づいている。
それはまた、格調を追求してやまない文芸とは異なり、大衆の生活に育ってきた国民的文化遺産でもあるのだ。
石川県にも、加賀山中の「山中節」や能登七尾の「まだら」など、その土地に伝わる有名な民謡があるが、なぜか正装した座敷歌のようで、浴衣に着替えてお茶の間で歌う感じでは無い。
そもそも、あのやっかいな節まわしなどは、地元の者や愛好者でなければ、なかなか覚え切れるものでなく、ちょっとロずさむというわけにはいかない。
それに比べて、隣の富山県には、全国にも名の知れた民謡が数多い。
その最たるものが、
♪キタサノサー、ドッコイサノサ、ーサ
の囃子(はやし)ではじまる、越中八尾の「おわら節」である。
その八尾町は、九月一日から三日間、おはら風の盆でにぎわう。
初秋の日がとっぷりと暮れた頃、坂の下から
続く・・・
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