第3章 移り行く女性像 ① 民話の世界 033P
組み合わせとは、なんともユーモラスな、と思わず吹き出しそうだが、それでは敬虔(けいけん)な地蔵菩薩を汚すようで申し訳ない、いやはや何とも複雑な気持ちになってしまう。
伝説はいつも謎めいていて、想像をかきたてる。
この福浦の港は、かつて千年も前、横浜や神戸港もなかった時代から、はるか大陸の「渤海(ぼっかい)」と交易していた、いわば外国航路の国際港であったのである。
そのため、海外からの使節を迎えるための、「能登客院」という日本国の迎賓館もあったという。
お市の愛しい男は船乗り、つまり外国航路のイキなマドロスさん。
♪長い旅路の、航海終えて
船が港に、とまる夜……
待ちにまった意中の男がやってくる、そのお土産は大陸産のブランドシルク。
当時は、綿や絹といえば、貨幣と同じ超高価なもの、それが愛する人のプレゼントならば、いつでも身につけておりたいというのが、女心というものである。
しかし、金で買われた女郎の立場……、時代劇に出てくる、二癖も三癖もある置き屋のババァの監視が厳しい。
同じ女郎たちの嫉妬心もあるだろう。
そこで、「身を売っても、心まで売らぬ」という、女郎渡世の仁義を通し、人
続く・・・
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