第2章 石川の女性 ③ 金沢の特性 026P
立たされているのである。
その一方で、新しい文明開化を試みようとするのか、豪華な県立音楽堂の次は新美術館の建築だという。
この地に昔から、「謡(うたい)が天から降ってくる……」と伝えられている。
そこで私も少しはたしなみをと思いつつ、きちんと着物にアップして、加賀宝生流の能舞台をのぞいてみたのである。ところがどっこい、金石の大野弁舌が作った「からくり人形」が上体を静止して、ただ足だけでスースーと動き回っているみたいだし、バックミュージックも、「ヨォー、ヨォー」と唸(うな)った後は、何を謡っているのかチンプンカンプンで、「これじゃ駄目だ」と、あっさり兜を脱いでしまった。
しょせん、背伸びしても化けの皮がはげるというもので、やっぱり私には肩の凝らない大衆芸能が似合いであったのである。
といって嫉妬するわけではないが、それほど伝統文化の豊かな土壌なら、全国区で通じるような
続く・・・