第7章 女の目から見た男たち ⑤ 古くて新しいもの 176P
話で、それが大東亜戦争にさしかかってくると、ちょっぴり元気がなくなってくるのだが、外地で死線を越えてきたことだけは誇りに感じていたようである。
そして、話の幕引きが近付くと、孫の私らを「ダラブツ」呼ばわりしながら、教育勅語を持ち出してきて説教し出すのであるが、しかし、そこに出てくるモデル像といえば、二宮尊徳や乃木将軍クラスであるから、ランクに隔たりがあり過ぎて、まるで子供心に落ちこぼれを自覚させるようなものであった。
ところが、祖母もなかなか心得たもので、その辺りにくると、孫らを寝床に促すので、座席から一人、二人と減っていく。
後の付録は、「ばあさんや、ばあさんや」となぜかへり下って、国定忠次と森の石松を唸り出すと、祖母は見計らったように、台所から「香々(ここ)」(句の野菜を漬けた食品)を切り刻んできて差し出す……、そんな光景であったのだ。
晩年は、爺さんのそんな昔の夢に酔ったような話を、祖母も半
続く・・・
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