第7章 女の目から見た男たち ⑤ 古くて新しいもの 175P
ちらも関心がなかったので想像であるが、多分徹底した管理社会で、雨が降れば、誰かがちゃんと傘を準備してくれるところで生きていたのでなかろうか。
だから、天気予報を見ることも知らないし、面倒くさければ、濡(ぬ)れて帰るという選択もしない人生を過ごしていたのであろうから、ずぶ濡れになり、それがどんな結果になるかという、人生の感覚も味わうことがなかった、そんな気がしてならない。
でないと、あんなに頭の良い者らが、そんな堕落した温床に気がつかないはずがないというものである。
それに比べて、「天は二物を与えず」の私の家庭教育といえば、亡くなった爺さんの説法しかあまり印象がない。
いつも囲炉裏端で、茶碗酒をちびちびやりながら、話すことといえばおおよそワンパターンの、「おそれ多くも……」で幕が開き、序盤は万系一世の天皇の名前を念仏を唱えるように並べたてて、まず記憶の良さを自慢する。
次に出てくるのが、大陸出征の手柄
続く・・・
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