第5章 されど女は強い ⑥ 暴力に耐えて 116P
なくては」という思いが広がり、夫への心はどんどん離れていった。
そのためには、できるだけお金をためなければと考えながら、一年が過ぎた。
相変わらずギャンブル好きで、無軌道ぶりを裏付けるように、W男のサラ金の借金は、数倍にも膨れ上がり、その督促も日に日に激しくなっていた。
今、私の前でT子さんは、「これでなんとか助けて下さい」と、悲痛ともいうべき涙声で、こちらから何も言わない先に、バッグの中から茶封筒を取り出し、中から現金を取り出して、一枚一枚丁寧に数え始めたのだ。
そのT子さんの細い指を眺めながら、その一枚一枚に彼女の怨念(おんねん)が含まれているように感じ、胸が締め付けられるようで、思わず私も「そのお金を元に戻しなさい」と叫ぶように言いつけた。
その場で、T子さんの訴える暴力の事実を確認しながらメモした後、知り合いの弁護士に連絡してわざわざ時間を割いてもらい、T子さんを同伴して、その法律事務所に車を走らせた。
その車中で、よくも
続く・・・
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