第5章 されど女は強い ② 女はしたたか 092P
の効果があろう、かといって肉体を武器にするほどのドライさももともと備えていない。
それなら裏をかいて、年嵩(としかさ)が増すほど磨きがかかるという、内なる美しさを売り出したほうが……、つまり、見るものをして「素直でつつましく、献身的に!」というやつだ。とはいっても、スーパーの閉店間際のような、売れ残りの値引き札をつけるよう方法は避けなければならない。
いろいろ思案をめぐらしながら、浮ついた気分に垣根をめぐらして、「針に掛かった大物の魚を仕留めるように、釣り糸を相手の引きに合わせて緩めたり強めたり、焦る気持ちをじっと耐える」と、こんな調子で手繰りを始めたのだ。
これが弱い女と見せかけて、有利に進める女のしたたかさというものである。
それから一年後、仲のよさそうな親子三人がデパートで買い物をしている光景があった。
そして、そこにS子さんの表情があったが、それは釣りキチしか分からないような、「してやったり!」と、「釣りバカ日誌」のハマちゃんスマイルで、ほくそ笑んでいるように見えるのである。
続く・・・
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