第5章 されど女は強い ② 女はしたたか 091P
ものが、ふたたび意識の中に復活してくるような、なんとなくウキウキする毎日であった。
そんなある日、T男から小さな紙切れのメモを渡された。
その中には、「あなたの魅力的な笑顔は、最高のご馳走です」と簡単に書いてある。
さて、そこはS子さんも年の功である。それが男の愛の告白であることぐらい見抜けぬはずがなく、また、こんな方法でしか、それをなしえない男の性格と誠実さに、かえって好意を感じたのだ。
ところが、もしここで自分の方から、「いいの、いいのよ!私なんかよりも、若い娘のほうが」なんてやってしまえば、夢はシャボン玉のように消えてしまうというもの。
彼女にとっては、これから先二度とないチャンスの到来に、そんな非現実的で実利に欠けるような子供じみたマネごとはしなかった。
「愛の手段に是非正邪なんてあろうものか」と呟きながら、ここで一世一代の「博打(ばくち)」を打ってみようと決心したのである。
勝ちか負けを掛けるため、虚々実々の駆け引きが始まる。
単細胞がやるような、厚化粧や着飾ったところでどれほど
続く・・・
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