第5章 されど女は強い ① 絶望から立ち上がる 086P
る」ということを……
女というものは、思い詰めると何をしでかすか分らない弱さがあるが、同時につらい過去から、一瞬に立ち直る強さが共存しているのである。
それから間もなくして、Y子さんは弁護士と相談のうえ、男に対して「婚約不履行」による、高額の損害賠償請求の手続きに入った。
それにしても、あの時の不思議で神秘的な現象とはいったい?
特別に、信仰心を持っているわけでもないY子さんには、永遠に理解できないものであろうし、人に話しても分かってもらえないだろう。があの「松」は生きる勇気を与えてくれたことだけは確かな事実である。
世の中には、宗教でも哲学でも答えを出せないことだってある。ましてや固定観念に縛られている日常生活であればなおさらのこと、Y子さんは、そんなことを自問自答しながら、
「ひょっとすると、人間は言葉で話すことを覚えたときから、自然と話すことを忘れ去ったのかもしれない。この地方に伝わる『自然の恵み』に感謝する、いろいろな土着信仰も、遠い昔は、きっとそのことを知っていたのであろう……」
と言い聞かせながら、納得するのである。
続く・・・
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