第3章 移り行く女性像 ⑥ 戦後混乱期 052P
通じる母の愛というべきか……。また、男も宿命だろうか、幾つになっても心の中で、美化されて残っているのが母親である。
おぶられた背のぬくもりに、甘い記憶を呼び戻し、瞼に浮かぶ母は自分が同じような年になっても、やはりその温もりは忘れられない。
男は、喜んで母を思い、泣いて母を思う。
戦場では亡くなった兵隊が、「天皇陛下、万歳」か「お母さん、万歳」のどっちを叫んで死んだ者が多かったか?と議論するものがいたが、しかし、母が天皇であり、天皇が母の象徴であると思えば、特別目くじらをたてる必要がなかろうと思う。
ところで、端野いせさんが亡くなって、出身の地元に鎮魂碑が建てられたが、それから間もなくして、それを知ってか偶然か、待ち続けていた息子さんが、中国で生存していることが確認された。
現地で結婚していて、奥さんや子供もいるという。
なんとも言いようのない運命の悪戯(いたずら)にしては、残酷過ぎるというものだ。
この親子は戦争をまだ引きずり、これからもそうであるように、その傷跡はあまりにも深すぎる。
続く・・・
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