第3章 移り行く女性像 ④ 文明開化 043P
き続けた……。明治二十七年に、ベストセラー「義血侠血」はこうして生まれたという。
それにしても題名は、一瞬たじろいでしまいそうな硬派であるが、しかし、中身は逆で、好きな男に裁かれて命を絶つ、哀れむ女の悲恋物語である。
新派の名作「滝の白糸」として、舞台で見る機会があった。
名優水谷八重子さんが演じる、水芸の白糸の女の性(さが)の美しさ、尊さ、温かさが、無情にも悲しくも愚かな悲劇を生むというストリーである。
終演にさしかかるや、感激極まって、幾度なく涙が頬(ほほ)に流れた。
そして、隣も、そのまた隣も、その途切れとぎれに聞こえるすすり泣きに、思わず貰い泣きというもので、客席いっぱいに広がる、それほど感動したものである。
ヒロイン滝の白糸が、貧乏学生村越欣弥と再会した場所が、この浅野川べりである。ここで欣弥の身の上を聞いた白糸は、上京して法律を勉強するよう欣弥にすすめ、学資の仕送りを申し出る。
男は夢を追い続けるもの、女はその夢を支えるもの……。
表舞台の華やかで、派手な裃(かみしも)姿の女芸人とは裏腹に、どこか寂しく過去の影が宿る。
女はいつも、好きな人にいじらしく、健気に尽くす
続く・・・