第1章 北陸の女性 ④ 宗教性が宿す人間性 016P
くすぐったいお褒めをいただくことがある。
よく考えてみると、幼少より自然に身につけた、「いただきます」「ごちそうさん」と手を合わせる作法、「餓鬼のような食べ方をするな、行儀悪い」「箸とはしを重ねていかん、縁起が悪い」という食事マナー、また悪戯すれば、「ダラ仏なことしたらバチ(罰)があたるぞ」「地獄のえん魔さまが、舌を切るぞ」などといわれた戒め。
良いことがあるたびに母や祖母から、「仏さんに、ちゃあんとあんやと(ありがとう)を言わにゃ」と感謝報恩を諭されたなどは、ことさら行儀やしつけとして教えられたという意識がない。仏法でいえば、生活で宿した”心の耕し”とでも言うのであろうか……。
なかでも「おかげさま」という言葉は、日本が誇れる代表的な単語だと思う。
決して、仏教の視点で言うのでなく、これほど便利に挨拶に、お礼に、良きに、悪しきに、喜びに、悲しみに、日常生活のすべてに通用する言葉が果たしてあるだろうか。
そして、その言葉が伝える、奥めかしさ、温かさ、響きの美しさなどは、とても筆舌で表現できるものでなく、特に、女性
続く・・・
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