第1章 北陸の女性 ④ 宗教性が宿す人間性 015P
北陸は昔から「真宗王国」といわれ、中世の一向一揆の舞台にもなり、弥陀一仏の真宗の教えが民衆の生活に密着している土地柄である。
浄土真宗だけでなく各地に信心厚い信檀家が寄進したという、真言・天台宗、曹洞宗、その他日蓮宗、浄土宗などの有名な寺院が多い。
各家々にも、総じて漆塗りの壮厳な仏壇が多く見られる。
私の子供のころは、朝夕チーンという鈴の音とともに、どこからともなく読経の声が聞こえてきた思いがある。
今から思えば禅宗の雲水であろうか、冷たいミゾレまじりの雪が降りしきる師走、白い着物に黒い衣を身に纏い、ワラジ履きの姿で、深く、饅頭笠(まんじゅうがさ)を被った坊さんが一軒一軒家を回りながら玄関先でお経を読む。
やがてお経がすむと、宗派を問うことなく、たいがい家の中から老母が寒そうに身をすくめて出てきて、「おかげさまでございます」となにがしかのお布施を包んだ白い紙を、坊さんに渡していた。
こうした光景はこの地方一帯の風物詩でもあった。
よく転勤族から、北陸の女性の美しさは、「行儀の良い作法と情のきめこまやかさ」なんて、
続く・・・
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